2021/4/24

 人ごみに紛れる。街のウィンドウを飾る商品に虚しさを覚える。手にしたところで現実が変化する気がしないからだ。俯きながらスマホを眺める。土曜日の夕方だ。所狭しと同じ商品が陳列されている。目にした途端に浮つくこころ。突き出た腹。親からべったりと離れることがない息子。メディア、広告、きらきらと輝く。意識せずとも入り込んでくる話声、他人の視線。暑くもないのに火照っていく。汗ばむ体。あらゆる欲望を叶えても、後には虚しさだけが残る。何もない虚構が広がるのを感じていた。手を繋ぐカップル。人ごみの雑踏の中で、人を待つ。思い思いに世界を楽しむ。悩みは外からは見えない。欲望が人間を突き動かす。性、食、衣、あらゆる欲望が商品となる。

 人間とはどんな存在なのか?世界は私の思いなど関係なく動いていく。いや、思いすらも動いていく。肉体を通じて世界を観る。妬み、恨み、嫉妬、それはそれ、世界は何も悪くはない。棚に並べられた特定の何かに魅了され、買い物かごに入れる。なぜ魅了されたのか?他にも代替物はあったというのに。雨はいつの間にか過ぎていく。晴れ間が射したと思ったら、雲で覆いかぶさってしまう。季節が流れるように、出来事は突然やってくる。生きている限り終わることなく続く流れ。思いに囚われてしまうと、現実は重くなっていく。目の前のことに手がつかない。世界は遠くへ行ってしまうから、引き裂かれるような苦しみを味わう。