2020/12/17 ②

冬の香りがする。心の芯まで凍ってしまうような寒さがやってきた。薪で沸かした熱い湯につかり、今日という今日の穢れを落とす。季節外れのBali haiを燻らせながら、思い巡らせる。待ちゆく人々は親切で、私の前に現れては笑顔で挨拶をしてくれる。私は一体ここがどこだか分からなくなって、あいつのせいにして、こいつのせいにして、人生の主役はどこか彼方へと消えてしまっていった。目の前に広がる世界はいつも規則正しく蠢いていて、私が動けば、がらりと姿を変えてしまった。出会いは神秘的で、別れもどこか寂しさが残るけれども、それはそれは美しいものだ。苦しかった日々を思い返そうと思う。真逆のことをすれば、幸福になれると考えたからだ。あの頃は掃除をしていなかった。夏はエアコン、冬は暖房を1日中付けていた。汚れた皿を3日ほど放置していた。髭を剃る頻度はまばらであった。定期的に散髪していたが、寝ぐせは放置していた。大学の飲み会特有の空回りしたようなノリについていかず、馬鹿にしていた。好きな人に話しかけることはなく、遠くから見守っていた。もちろん、好きだと伝えることはなかった。Youtubeを1日中見ては、動画の中に登場する輝いた人物に憧れと嫉妬を感じていた。自慰に耽っていた。深夜に眠って昼間に起きる昼夜逆転の暮らしであった。倦怠感が纏わりついて離れなかった。読書はしていなかった。興味関心事がなく、勉学を怠っていた。体を動かしていなかったからだろうか、血の気が引けたように毒素が体内に溜まっていくような感覚が続いていた。ふとやりたいと沸き起こった衝動に対し、何かと理由を付けて動かなかった。人と関わらなかった、関わり合いを避けて孤独に閉じこもっていた。学歴の低い人間を見下していた。世界の側に心の空虚を満たす何かがあると思っていた。1日中どう生きればよいか考えていた、そして未だに答えは見つかっていない。震えるような喜びがやってくる。ふいにかけられた言葉や音楽、恋人からの甘いキスを引き金にそれはやってくる。そして去っていく。凍えるような寂しさがやってくる。それは愛し合っている男女を見た時の強烈な孤独感と共にやってきて、気づいたころには消えている。張り裂けるような不安がやってくる。社会のレールから外れてしまい、未来の推測ができなくなった時にやってくる。それでも朝になれば、思い悩んでいた昨日があったのかも分からないかのように溶け去ってしまう。私は何をしているのか分からなくなって、瞑想にふける。ひたすら瞑想にふけるのだ。私の孤独に寄り添ってくれた言葉の数々が、私の宝物だ。そしていつの日か、来るべき孤独に恐れおののく人間の拠り所になるような言葉を紡ぐことができたのなら、それはとてつもなく嬉しいことだ。