2020/10/17

両親が東京までやってきた。酒を飲み、饒舌になる。大そうな夢を語り、言わなければよかったと後悔する。金がなくてどうするんだと余りにも現実的なことを指摘される。有名国立大学を出て、一部上場の企業を一年経たずに辞め、派遣社員になりたいといった。なぜだろうか。どうして私は、辞めたいのだろうか。貧乏になりたい。冬は凍えるほど寒い。時がたち、人は年を重ね、戻ってくることはない。孤独と飢えが沁みてくる。退屈でつまらない、ときめかない毎日は灰色に染まる。色がない日々がただ過ぎていく。ヒモジイ暮らしは惨めだと語る。病になったときに、病院へ行く金もない。小割烹のうまい飯も食えない。結婚もできない。子供も育てられない。ただ孤独に生きて、孤独に死ぬ惨めな暮らしを送るのだろうか。街はずれの東京の漫画喫茶の狭いブースの中で、心地よいギターの音色を聞きながら、私は思いを馳せる。秋の夜には、隣にいるはずだったあなたと月を眺められたら、どれほど幸福なのだろう。何も知らない若者の意見を聞いてくれ。なぜこれほどまでに働くのか。誰か教えてほしい。なぜこれほどまでに働くのか。モノにあふれた世の中なのに、皆に分け与えられず、富は偏っていく。誰かのために生きていても、自分に嘘をついてしまうみたいで苦しい。自分を信じて、ただ自分を信じて生きていけたらどれほど楽なのだろうってよく考える。無職になると、身の回りにあるモノすべて、誰かが労働して生産した結果であることに愕然とする。ただそれを享受するだけだと、あまりにも苦しい。ずっと与えられ続ける人生なんて苦しい。与えて、与えて、与えるのが清々しい。何にもときめかず、取るに足らないと感じてしまう。どれほど達成しても、まだできるはずだと思ってしまう。自分にはまだまだできると思う。世の中は沈んでいる。なぜこうなってしまっているのだろう。勉強したい。満足することなく、自分を高めていきたい。自分の感覚に磨きをかけていきたい。最高な自分を想像する。一つの道を追求する。わき目も振らず、自分の感覚を信じて追及する。季節ごとの微かにうつろう景色に、淡い思い出を重ねて、耽りに耽る。枯葉が落ちる寒い季節が迫りくる。温かくて甘い紅茶が身に染みわたる。また労働だ。迫りくるタイムリミットに気持ちが沈んでいく。何もする気が起きない。色々なことをしたいのに、現実から逃げたいだけなのか。どれほど小さくて、見向きもされないとしても、創造することはすごく楽しい。何かを想像することはすごく楽しい。そして心から美しいと思った人、モノに囲まれていたい。写真を撮って、言葉を紡ぐだけで僕は満足してしまう。