霧雨

ミストのような雨が降っている。それはとても冷たくて、7月とは思えない寒さである。そんな中で私は生きている。貪ることが減っていく。食べるのは自然の流れであり、意識が研ぎ澄まされていく。あれほど恐れていた何もないという居場所は、目の前に迫ってくる。音楽だけが一定のリズムで流れている。今日も仕事であった。朝は世界にファックされているみたいだった。前日11時のスナック菓子と酒が、胃の中に残っていた。前日の貪りは、仕事のやりきれなさから解放されたい衝動から来たものだった。上司の言動が、私の心にこびり付いて離れなかった。少し時がたち、と言っても翌日だが、あの頃が夢のように流れていただけだと知った。残業することに苛立ちと理不尽さと眼球の疲労と(経理の仕事は画面を見続けるのだ)思考に掴まれた疲労とその他もろもろが混じり合った何とも言えないやつが、私から離れなかったから、忘れたいと酒を飲んだのだ。そして翌朝、ファックされたみたいだった。最悪の気分、この世に生まれたことを後悔するような気分。そしてまた仕事が始まる。私はこの世界でどうすることもできない。そして少し気が晴れると、調子に乗るのだ。孤独であるが、さらに食べる喜びを奪ってしまったら、私には何も残らない。だがそれが心地よかったのだ。地に這いつくばり生き永らえたことや、もはや失うものが何もないことは、ただ前に進むだけで喜びしか感じないなんて!想像すらつかなかったことだ。何かがおかしいとは子供のころから思っていた。それはいまだに私の生きる原動力となっている。慧眼の目が開かれていることは、知っていたのだ。体の奥から湧き上がる光を私は知っていたのだ。闇を這いつくばりながら、また内に深く深く潜ろう。それしか私には残っていない。もうそれしか残されていないのだから。誰にも止められないし、もうだれも止められないところまで来てしまった。道元に近いものを感じる。仕事後の頭の疲労が心地いい。そう感じられるように、ただ今だけを感じていたい。そうやってその瞬間を生きていたい。頭の疲労が心地よい。そんな風に生きていたい。ただそれだけを感じていたい。そうやって生きていたい。仕事の疲労が心地よい。そんな風に生きていたい。ただいまだけを感じていたい。脳の傷が心地いい。そんな風に生きていたい。ただこの瞬間に浮かんでいたい。