8月15日

誰も知らない。もっと見て。もっとわたしのことを知って。ほら、みて。昨日髪を切ったのだから。これ可愛いでしょ。気づいてくれて嬉しい。あなただけ、こんなわたしを受け入れてくれる人は。可愛いねえ。成功ってなんだ。失敗ってなんだ。わたしは知っていることしか知らない。なんだこれ。知らないことは想像すらできない。なんだこれ。近所にお店ができたの。それまでなかったところに人が集まる。流れができる。金脈が流れる。少しリッチになった?皆が話題にする。さも昔から知っていたかのように。当たり前のように皆話題にする。一昨日までなかったはずなのにどうして、どうして?知らない。誰も知らない。俺にもわからない。次はなにができるのだろうか。誰も知らない。明日は来る?昨日はあったのか?記憶だけが頭によぎっては、消えてゆく。朝に眼が覚めると、現実がドンっと聳え立っている。争い違いほどに濃厚な現実が。疑いたくなるほどに奇妙な現実が聳え立っている。

ムード。いい雰囲気を纏う。グッドなヴァイブス。いい気分。いい香り。肌触り。体温。風がまとわりつき、去ってゆく。溶けてゆく。タイフーンが来ると、街の雰囲気がガラッと変わる。ピンと張った緊張感が好きだ。木々が揺れ、ブルーな街にわくわくする。いずれ晴れ渡るだろう。森に行きたい。命響き渡る、森に行きたくなる。さえずりが、川の流れが、絡まったわたしの心を解きほぐしてくれるかのように、歌い歌い。いつか死ぬのだろう。この世界を去らねばならない時がくる。その時まで、わくわくしていたい。ゆらぎを、ムードを、感じていたいもので。一緒に消えてしまいたい。お気に入りのジャケットを纏い、海沿いを歩くだけで、チルしてしまうほどに、わたしの心は、安上がり。ああ、まだ記憶にこびりつく、あの思い出に、浸っていたい。やることをやる。退屈で、退屈な、故郷を旅立ちたい。

誰も知らない。誰も近づけないほどに昇りたい。もっと高く高くに昇りたい。宇宙の果てまで、昇りたい。そして、溶けてしまいたい。誰も見ていない果てまで昇りたい。記憶も追いつかないほどに、昇りたい。誰も知らないほどに、昇りたい。消えてしまう。あいつが死んだそうだ。あいつはどんなやつだった?ほら、まだ記憶にこびりついてやがる。甲高い笑い声が、鼓動を突き刺すほどの笑い声がする。

幸せになりたいの。いつもイライラしているの。焦りと不安が取れないの。幸せになりたいの。わたしを鎖から解放して。どこにいても不安が取れないの。幸せになりたい。幸せになりたい。幸せになりたい。助けて。あなただけしかいない。わたしには、あなたしかいない。もしわたしがいなくなったら、ちゃんと悲しんでくれる?愛してる?わたしのことを想ってくれる?本当に、わたしにはあなたしかいないのだから。

やめてくれ。俺は責任を取りたくない。誰にも縛られたくない。誰にも縛られたくない。俺に構うな。自分のことをやれ。情動を大切にしなさい。心の声を大切にしなさい。

東京に全てがあると思っているのなら、飛んだ勘違いであると知れ。実態はね、空っぽ、空っぽだよ。何にもない。全てがあるように見えて、空っぽよ。空っぽならば、自分で創ればいい。なにもないのなら、自分で創ればいい。そうやってやっていけばいい。世に溢れるブランドは、全て誰かが作ったものなのだから。彼らと同じようにやればいい。

俺の記憶が正しければ、あいつはいい奴だったよ。

がっかりするね。どのお店も同じようなものばかり提供しやがる。オリジナルのおの字もないね。そうして均質化してゆく。消費者は飽きてるのだ。便利になる程に、わくわく感も同時に消え去り、生ぬるい安心感だけが残る。もっと尖ったやつがいい。もっと尖ったやつがいい。真似は成長する上で欠かせないが、真似酒で終わるやつはつまらない。真似を超えて、オリジナルを生み出す奴こそが本物である。それがクールであって、時代を創る。

与えられた快楽をのさぼる喜びではなく、もがいてもがいて、悩み抜いて、作り上げる喜びを知りたい。そんな風に生きていきたい。

ファッションにこだわる。香りにこだわる。肌触りにこだわる。ミュージックにこだわる。インテリアにこだわる。時計にこだわる。髪型にこだわる。体を清潔にする。口に入れるものにこだわる。仕事に誇りを持って、高めていく。海沿いのムードある場所で暮らす。最高の連れと暮らす。かっこいい人間であり続ける。アートにこだわる。絵を描く。ヨガにこだわる。水泳を続ける。海と山に触れる。出会いにこだわる。語り合う瞬間こそ妙味ある時間であり、大切にしたい。瞑想的に生きる。祈りを忘れない。